お手伝いにお金を払うのは、教育として正しいのか
結論から書きます。手伝い全部にお金を払うのは、やめたほうがいいと思います。
ただし、払っていい手伝いもあります。 違いは金額ではなく、その仕事が誰のものかです。
小学生2人を育てながら、子ども向けのアプリを作っています。この問題は何度も考えました。考えた結果をそのまま書きます。
お手伝いに報酬を出すと、やる気がなくなるのか
まず、反対意見の中身を正確に見ておきます。
よく言われるのは、もともと自分からやっていたことに報酬を出すと、かえってやらなくなるというものです。「お母さんが喜ぶからやる」だったものが、「お金がもらえるからやる」に置き換わり、もらえなくなった途端にやめてしまう。
これはアンダーマイニング効果(過正当化効果)と呼ばれるもので、実際に起きます。心当たりのある方も多いと思います。
ただ、いつでも起きるわけではありません。 起きやすいのは、その子がもともと進んでやっていたことに値段を付けたときです。
逆に、もともとやりたくなかったことに対価を出しても、失われる意欲がそもそもありません。風呂掃除を進んでやりたい小学生は、あまりいません。
ここが分かれ目です。
払わないほうがいい手伝い、払っていい手伝い
線はここで引けます。その仕事は、もともと誰の仕事か。
| 例 | 対価 | |
|---|---|---|
| 自分のこと | 自分の食器を下げる、自分の部屋を片づける、歯みがき、宿題 | 払わない |
| 家族みんなのこと | 食卓を拭く、洗濯物をたたむ(自分の分) | 払わない |
| 本来は親がやる仕事を引き受けた | 風呂掃除、ゴミ出し、米を研ぐ、下の子の送り迎えに付き合う | 払ってよい |
自分のことにお金を払うと、「払わないとやらない」が育ちます。 自分の食器を下げるのに報酬が要る、という状態は、親にとっても子どもにとっても損です。
一方、風呂掃除は本来、親の仕事です。 それを引き受けてもらうなら、対価があるほうがむしろ筋が通ります。仕事を頼んで、対価を払う。世の中と同じ形です。
「家族なんだから当然」と「仕事を引き受けた」は、別のことです。 ここを混ぜると、どちらの説明もできなくなります。
お手伝いの金額は、相場より「理由」で決める
いくらにするか、で迷う方が多いと思います。ただ、相場と呼べるものは、はっきりしません。 家庭ごとのばらつきが大きく、他所と比べても答えは出ません。
金額そのものより、なぜその値段なのかを説明できるかのほうが大事です。
風呂掃除が50円で、ゴミ出しが20円なら、その差には理由があるはずです。時間がかかる。やりたくない度合いが違う。やらないと家が困る度合いが違う。
子どもに聞かれたとき、答えられる値段にしてください。 答えられない値段は、次に必ず「もっとちょうだい」を呼びます。
逆に、理由が言えるなら、そこから話が広がります。「じゃあ、お父さんの仕事は1時間でいくらなの」という質問が出てきたら、しめたものです。お金の教育は、そこから始まります。
お小遣いそのものの決め方は、こちらに書きました。
お手伝いの報酬で、やってはいけない三つのこと
成績に払わない。 テストの点に値段を付けると、点を取ることが目的になります。カンニングの動機にもなります。結果ではなく、行動に払ってください。
後から値段を変えない。 一度決めた額を親の都合で下げると、信用が壊れます。変えるときは、先に相談して、次の回からにしてください。
罰として減らさない。 手伝いの対価と、しつけを混ぜないことです。混ぜると、子どもは「お金で許してもらえる」と学びます。
うちのやり方(お小遣いではなく、提案の権利にしました)
私が作っているアプリでは、毎日の習慣と手伝いにコインが付きます。 上に書いた線でいえば、危ない側に片足を置いています。
そのうえで、三つ決めました。
コインは現金にならないし、現金でも買えません。 アプリの中で実際のお金が動く場所は、一つもありません。
コインの行き先を、買い物ではなくプレゼンにしました。 貯めたコインで何かを買うのではなく、欲しいものを親に提案する権利を得ます。理由と対価を用意して、親にプレゼンして、承認か、逆提案(条件を変えて返す)か、考え直しか、見送りかを受ける。
つまり、目的を「お金をもらうこと」ではなく「提案を通すこと」に置き換えました。
コインは運に左右されません。 やれば決まった額が付きます。何をすれば報われるのかが、ぶれないようにしました。
それでも、これで正解かは分かりません。うちの下の子は、いまのところガチャが回せるから手伝いをしています。動機としては、きれいではありません。
ただ、入口がきれいである必要はないとも思っています。 大人も、給料以外のいろいろなもので動いています。大事なのは、入口の先に何を用意しておくかのほうです。
まとめ
- 自分のことには払わない。 払うと「払わないとやらない」が育つ
- 親の仕事を引き受けたものには、払ってよい。 筋が通る
- 金額より、値段の理由を説明できるか
- 成績に払わない。後から下げない。罰で減らさない
- お金をもらうことより、使い道を自分で決める練習のほうが残る。 うちではコインの行き先を、買い物ではなく提案にしました
お手伝いにお金を払うかどうかは、家ごとに決めていいことだと思います。ただ、何に払っていて何に払っていないのかを、親が説明できる状態にはしておきたい。 子どもはそこを、よく見ています。
