「みんな持ってる」と言われたときの答え方
結論から書きます。「みんな持ってる」を否定しないでください。 言い換えさせてください。
これは嘘でもわがままでもありません。理由になっていないだけです。だから、潰すのではなく、理由の形に直させます。
小学生2人を育てながら、子ども向けのアプリを作っています。うちのやり方も最後に書きました。
「みんな持ってる」はなぜ出てくるのか
理由がないから出てくるのではありません。 理由を言葉にできないから出てきます。
子どもが本当に感じているのは、たいていこういうことです。
- 話についていけない
- 遊びの輪に入れない
- 自分だけ取り残されている気がする
これを一言で言おうとすると、「みんな持ってる」になります。 他に言い方を知らないからです。
そして、これは大人も使います。「他社さんはもう入れてますよ」「みんなやってます」。同じ形です。 便利だから使われるのであって、子どもが特別ずるいわけではありません。
だから、言い方を増やすのが親の仕事になります。
「みんな持ってる」に使わないほうがいい答え方 3つ
「よそはよそ、うちはうち」
いちばんよく使われて、いちばん会話が終わります。
言っていること自体は正しいのですが、子どもの側に返す言葉が残りません。 言い返せないので黙るだけで、納得はしていません。そして次からは言ってこなくなります。
理由を言う練習の機会が、ここで一つ消えます。
「本当に"みんな"持ってるの?」
数の勝負に持ち込む返し方です。たいてい「◯◯くんも△△ちゃんも持ってる」と返ってきて、こちらが「それは3人でしょ」と言う展開になります。
勝っても何も残りません。 しかも、本当に多数派だった場合には、こちらが折れるしかなくなります。数で決めると決めたのは、親のほうです。
「じゃあ◯◯ちゃんの家の子になれば」
言った側は冗談のつもりでも、突き放されたことだけが残ります。 これを言われた子は、次から欲しいものの話を持ってきません。
「みんな持ってる」を理由に変える 3つの質問
潰さずに、言い換えさせます。順番に聞くだけです。
①「持っていないと、いま何が困るの?」
ここで、ぼんやりした不安が具体的な場面になります。「休み時間に話が分からない」「放課後に自分だけ別のことをしている」。困りごとが出てきたら、それがもう理由です。
②「それがあったら、明日から何が変わるの?」
これは大人でもうまく答えられません。欲しい理由は長く話せますが、手に入ったあとのことは、想像しないと言葉になりません。
答えられなかったとしても、責めないでください。答えられなかったことに本人が気づくのが、いちばん効きます。
③「"みんな"じゃなくて、あなたの理由を1つだけ教えて」
ここで言い換えが完成します。1つだけ、と数を区切るのが大事です。 たくさん言わせようとすると、また「みんな」に戻ります。
「友だちが持っている」は理由になる。「みんな」はならない
ここが、この話でいちばん大事なところです。
友だちを理由にするのを禁止しないでください。 だめなのは「みんな」のほうです。
| 主語 | 中身 | |
|---|---|---|
| 「みんな持ってる」 | 他人 | 自分がどうしたいかが入っていない |
| 「友だちと一緒に遊びたい」 | 自分 | やりたいことが具体的に入っている |
同じ「友だち」の話でも、主語が自分に変わると理由になります。
- ✕ みんな持ってる
- ○ 友だちと一緒に遊びたい
- ○ ◯◯くんと同じことができるようになりたい
- ○ 話に入れなくて、休み時間がつらい
子どもが本当に言いたかったのは、たいてい下の3つのどれかです。それを引き出すのが目的であって、友だちの話を封じるのが目的ではありません。
本当に困っているときの「みんな持ってる」
ときどき、これは軽い話ではありません。
持っていないことで、実際に輪から外れている場合があります。 連絡がそこで回っている、遊びの約束がそこで決まっている、という状態は実在します。
そのときにやることは2つです。
① 困っていることを言えたこと自体を、先に認める。
「それは、ちゃんとした理由だね」
買うかどうかとは別です。理由として成立していることを認めると、次からも言ってきます。
② 道具で解決するのか、別の方法があるのかを一緒に考える。
同じ困りごとに、別の手があることもあります。「買う/買わない」の2択にしないことが、ここでは効きます。
断り方そのものについては、こちらに書きました。
親のほうも「みんな」を使わない
言い換えを求める以上、親の側も揃えておきたいところです。
- 「みんな持ってないよ」と嘘で返さない。 事実でないと、次に本当のことを言っても信じられません
- 「普通は買わないよ」と言わない。「普通」は「みんな」と同じ、主語のない言葉です
- 「お父さんが子どものころは」と言わない。 時代が違うので、子どもには検証できません
自分の理由を言う。「うちは、誕生日まで待つことにしている」「この金額は、いまの家の予定に入っていない」。主語が自分になっていれば、それで足ります。
値段そのものをどう伝えるかは、こちらに書きました。
うちの場合
私が作っているアプリでは、子どもが欲しいものを提案の形にして親に出すようにしています。
その提案を作るときに、案内役がいちばん最初にする質問が、これです。
「まず教えて。どうして それが欲しいの? 『みんな持ってる』じゃなくて、きみの理由を。」
一問目に置きました。 ここを通らないと先に進めません。
そのうえで、答えの例として「友だち」を残してあります。
「友だちと いっしょに 使えるから」
「友だちが 持っていて、いっしょに 遊びたい」
封じているのは「みんな」であって、「友だち」ではないということです。ここを一緒に禁止してしまうと、子どもの本当の理由まで消えます。
次の質問は「それを買ったら、毎日はどう変わる?」で、そのあとに案内役が親の反論を先に出してきます。
「おうちの人は こう言うかも:」
本番の前に、反対意見をもらえるようにしてあります。親の側に立って自分の案を見る練習です。
最後に親が返すのは4つです。承認、逆提案(条件を変えて返す)、考え直し、見送り。 「みんな持ってる」のままでは、どれにも進めません。
まとめ
- 「みんな持ってる」を否定しない。言い換えさせる
- 「よそはよそ」「本当にみんな?」「じゃあよその家の子に」は使わない
- 3つ聞く。「いま何が困る?」「明日から何が変わる?」「あなたの理由を1つだけ」
- 「友だち」は理由になる。だめなのは「みんな」。 主語が自分かどうかで分かれる
- 本当に輪から外れている場合がある。 買うかどうかとは別に、理由として認める
- 親も「みんな」「普通」を使わない。 自分の理由を言う
「みんな持ってる」は、理由がないという合図ではありません。 言葉が足りていないという合図です。そこを埋めるのは、まだ親の仕事だと思っています。
